2011年10月29日
会場のVOODOO LOUNGEは、真ん中にフロアがあり、フロアを囲むように通路がある。通路とフロアは、いくつかの入口を除いて仕切られている。開演前にはすでにフロアは満員。通路にもテーブルと椅子があり仕切りの上部は透明なので、そこからライヴを楽しむことができるが、やはりフロアとの差は歴然。ヴォリュームも少し小さくなるし、体で感じる音圧もまるで違う。少々狭くても、フロアに観客が集中するのは当然だ。
19:00、ライヴがスタート。まずは“
こまくやぶれる”で観客をファンク色に染め始める。今日もヴォーカル・浜野謙太(以下ハマケン)の小刻みなステップは健在。バンドも相変わらず隙がなく、確かな演奏力を武器に一塊りになって攻めてくる。立て続けに“
はやりやまい”、“
城”とセカンド・アルバムの曲を演奏。“
はやりやまい”は音源以上にスピード感があり、ライヴ向き。“
城”はミドル・テンポも相まって、メロウな雰囲気で会場を包み込んでいた。
MCではハマケンの笑いを誘うトークで会場を和ませる。トロンボーンの久保田森との掛け合いも面白く、息の合った漫才コンビのような出で立ちだけを見れば、ジェームス・ブラウン直系の正統派ファンクを演奏するとは到底思えない。しかし一度演奏が始まれば、フロアを一瞬で魅了してしまうのだから驚きだ。
MCから流れるように、“
毛モーショナル”が始まった。さっきまで笑っていた観客は、笑顔はそのままで笑い声を歓声に変え、体全体で楽しみを表現していた。続けて“
むくみ”、“
環八ファンク”を演奏。“
むくみ”では『むくみ』という歌詞を高速で連呼し、フロアを熱狂させたかと思えば、“
環八ファンク”では東京の環状八号線の様子を福岡の渡辺通りに置き換えて、福岡の観客にも理解させようとなぜか頑張っているハマケンの姿が印象的だった。
(画像はZAINICHI FUNK OFFICIAL WEB SITEより)
ここで急にバンドメンバーが『いったん休憩しまーす』と言って下がってしまった。ここでライヴが2部制ということに気づく。休憩中は開演前と同様にDJボギーが繋ぐ。DJなのになぜかマイクを持ち、自身がタクシーで体験したことを話し始める。そのタクシーでもらったという演歌のCDを流した後、幕が開き2部が始まった。
2部の序盤は、ファースト・アルバムから“
最北端”、“
のこってしまった”、“
罪悪感”を披露。リリース当時から色あせることなく、鮮度はそのまま。生演奏の生命力が加わって、休憩で一度収まった熱気が再び沸々と温まり始める。その種火をバンド側が見逃すはずはない。ここで一手加えたのは、“
爆弾こわい”だ。セカンド・アルバムを代表する疾走ファンク・ナンバーは、大爆発を起こすには切っても切り離せない切り札だった。
終盤は、長めのMCで物販のタオルとTシャツを紹介しながらハマケンは休憩していた。と言っても椅子に座ってしっかりと休憩するわけではなく、紹介役の久保田と会話しながら体を休めている。あの小刻みなステップを連続して3曲も続けたら、どんなアスリートでも息が上がるはずだ。それを彼はもう10曲以上続けている。2部制で休憩を挿んでも、一度上がった息を整えるのは時間がかかるもの。彼のベストなパフォーマンスを支えているのは、この長めのMCと言ってもいいだろう。
(画像はZAINICHI FUNK OFFICIAL WEB SITEより)
MC終了後、新曲の“
におい将軍”を演奏。これはハマケンも触れていたとおり、ロック・バンド髭とのスプリット盤としてリリースされる。続けてバンドが選択した曲は、ファースト・アルバムの“
きず”だった。“
爆弾こわい”のときの大爆発に負けず劣らず、もしかするとあの爆発を超えるぐらいの歓声と熱狂が生まれたかもしれない。バンドから放たれるむき出しの魂は、フロアを巻き込んで幸せな空間を演出していた。2部は大盛況のうちに幕を閉じた。
アンコールは、“
京都”。最後はもうこの曲しかないと観客全員が思っていたはずだ。おなじみの京都・アンド・レスポンスは、福岡バージョンに変更。親富孝通りやヤフードーム、辛子高菜など福岡の名所や名産をコール・アンド・レスポンスする瞬間は、今日一番の幸福感がフロアを支配していた。休憩を含めおよそ130分、音楽の楽しさが凝縮された2時間強だった。
(松本 良太)
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